英語タイトル: Postural instability in idiopathic Parkinson's disease: the role of medication and unilateral pallidotomy
著者: Helen M. Bronte-Stewart(USA)
雑誌名: Brain (2002), 125, 2100-2114
PMID: 12183355
パーキンソン病ではヤールステージ分類のIII位になると姿勢不安定性を呈し、これを一般的にPostural instabilityと呼んでいます。
この論文では、Sensory Organization TestとUPDRSを用いてこれを明らかにしようとしています。
Sensory Organization Testは、余り聞きなれないテストバッテリーですが、体性感覚、視覚、前庭感覚の統合能力を見るためのものです。
テストはそれぞれの感覚を阻害する手法を用いており(目隠しなど)、被験者は重中心を測定出来る床の上に立って、動揺スコアが測定されます(下図↓)。
ちなみに、実験機器に対する学習性バイアスなどが低いそうです。
図: Sensory Organization Test
この図だけ見ると、HorakさんのBESTestを彷彿させますね。違いはメカを使っている所でしょうか。
この測定を用いて、オンオフ時のバランス機能を見ていきます。
結果、すべての症例がオフ時に姿勢・歩行不安定性スコアの異常値を呈していました。
Sensory Organization Testは、正常群と異常群とに分けられる結果となったそうですが、ほとんどの症例が感覚遮断時に異常な姿勢コントロールを呈したそうです。
薬剤療法によって姿勢・歩行不安定性スコアは改善しましたが、 Sensory Organization Testは悪化しました(姿勢動揺が大きくなった)。
淡蒼球破壊術では姿勢・歩行不安定性スコアも、Sensory Organization Testの結果も改善したそうです。
そのため著者らは外科的治療を薦めています。
また、著者らはこの論文の中で、バランス障害を姿勢コントロールの中枢性階層理論を用いて解説しています。
彼らの理論では、パーキンソン病患者の姿勢コントロールは感覚機構の処理過程が障害されることで、もはや"自律的"に働かなくなっていると言及しています。
バランスを保つ活動は、本来無意識的に起こるはずですが、これが難しくなってしまう事ですね。
また、"体性感覚フィードバックを(運動覚)を過少評価してしまう"と報告する過去の報告を引用しています。
これにより、パーキンソン病患者では適切やバランス保持が困難になる事を説明しています。
パーキンソン病における姿勢不安定性のメカニズムはとても複雑ですが、感覚の処理が上手くいってない事が1つの原因と考えると、どの様な感覚が障害されているのかみていく必要がありそうですね。
また、これは個人的な意見ですが、すくみが強いタイプ、ふらつきが強いタイプで感覚処理の違いがあるのかなども興味深いですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿