英語タイトル: Rehabilitation of Motor Function after Stroke: A Multiple Systematic Review Focused on T echniques to Stimulate Upper Extremity Recovery
著者 : Hatem SM, et al (ベルギー)
雑誌名 : Front Hum Neurosci. 2016.
PMID : 27679565
この論文は、脳卒中患者における上肢の運動機能改善を目的とする治療介入を調査したシステマティックレビュー文献(5712の文献をレビューし、270を選り抜きしている)。
集積した文献は従来のものに加えて、非侵襲脳刺激療法、ロボットアシスト練習、バーチャルリアリティなど近年の治療介入方法も含んでいる。
また、エビデンスに基づくDecisional tree(決断を導くためのツリー、下図のようなもの↓)を考えた。
著者らの結論としては、現代においては患者個人に合わせたTailor evidence-based treatment strategies(テーラーメードの治療戦略)が重要であると考えている。
治療介入は患者個々の運動機能を最大化するために、いくつかのものを組み合わせる必要がある。
いくつかの治療介入については今後も議論を重ねる必要があるが、運動スキル学習や、新たなテクノロジーによる治療介入が脳卒中の運動リハビリに有益と思われると結論づけている。
図、著者らの考えるDecisional tree↓
また、以下のように、システマティックレビューの観点から、効果のあるなしを分類している。
●エビデンスのある主な推奨リハビリアプローチ
・筋力強化エクササイズ(muscle strengthening exercises)
・CIMT
(constraint-induced movement therapy)
・ミラーセラピー(mirror therapy)
・ボツリヌス毒(botulinum toxin)
●エビデンスのある主な補助的リハビリアプローチ
・メンタルプラクティス
・高頻度TENS
・他動的神経筋刺激
・反復経頭蓋刺激
・経頭蓋直流刺激
・選択的セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
・ボツリヌス毒
・バーチャルリアリティ
●上肢のリハビリとしてエビデンスに乏しく推奨できないもの
・ボバース概念
・徒手的他動ストレッチ
・両側トレーニング(機器を用いたもの、課題指向性)
・ロボットアシスト
などなど
最後に、効果が乏しい治療介入は、大多数のRCT研究を出す事が求められると締めくくっている。
《私見》
現在の各治療介入方法において、それぞれのエビデンス構築の進行度合いを分かりやすく示してくれている。
大概の脳卒中患者に対してエビデンスのある治療介入を実施していけば、治療技術あるなしに関わらず、間違いなく患者さんを改善させる事が出来るだろう。世間的にはどのセラピストであっても、良質な医療を提供出来る様にする定めがあるのだと思う。
効果が期待できないとする物の中でロボットを除けば、治療介入の効果がセラピストの腕に掛かってるものばかりである。
つまりエビデンスを出しにくいというのは個人差が出過ぎてしまうという事でもある。
これを面白いなと思う人か、それとも面倒臭くてつまらないなと思うかだけの問題かもしれない。
技術がいらなくなったセラピストの行く末がどうなるのかは、実はこれを読んだセラピストに掛かっているのかもしれないと考えさせられた。
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