英語タイトル: High-demand motor tasks are more sensitive to detect persisting alterations in muscle activation following total knee replacement
著者: Pieter Severijns et al (ベルギー)
雑誌名 : Gait Posture. 2016
PMID : 27621084
Keywords:
Total knee replacement 人工膝関節全置換術
Osteoarthritis 骨関節炎
Kinetics and kinematics 動力学と運動学
Electromyography (EMG) 筋電図
Functional motor tasks 機能的運動課題
残念ながらTKA術後も患者は日常生活や活動の中に困難さを抱える事が多いです。
著者らは、何が問題かを明らかにするために特に筋活動パターンを術前後(術前1週間前、術後1年後で評価)で調査しました。
この筋活動パターンは、筋電図を用いていて、運動学については詳細なポインターを股関節と膝、足部周囲に置き、三次元動作解析を、用いて見ています。膝の屈伸角度や、疼痛に関しても術前後で調査しています。
課題中、被験者には様々なステップを実施してもらい、その時の状態を観察しました↓
図: 様々なステップ(複雑な運動課題)
そして最終的には健常者のコントロール群と比較しています。
結果として、術後1年経つと歩行パターンについては健常者と変わりないレベルまで至るが、様々なステップでは違いが見られたとのことです。つまり、TKA術後患者の歩行パターンだけの改善ではなく、もっと問題を深く分析しないといけないのではないか?と締めくくっています。
私個人の意見では、ここからさらにどの様な組み合わせの運動が行いにくいままなのかを探る必要があると考えています。
例えば"歩行には求められない大きな体幹の回旋と股関節伸展、膝伸展のパターンができないのか?"などですね。
ここから先は自分で研究していくしかないです。でも面白い治験ではあると思います。
2016年9月30日金曜日
2016年9月29日木曜日
英論文を手早く読むには?
今日は英論文をまだ読みなれていない方、もしくはこれから読み始めようと考えている方に向けて、私が実践してきた方法をお伝えします。
私が英論文を読み始めた頃、Ctrlキー+Cボタンを押すだけですぐに意味がパソコン画面上に出てくる英辞郎を多用していました。
これにより紙の辞書を引く手間が省け、単語の意味だけを取り敢えず捉える方法を取っていました。
今はスマホに辞書機能が付いたので、もっと簡単に調べる事が出来る様になりました。
文法が分からない段階でも単語の意味さえ分かれば、大体の意味がつかめるのです。
下に先日紹介した論文からの引用例文を載せてみますね↓
Computational models have been proposed in several fields, to interpret not only the CNS functioning, but also its efferent behaviour.
例えば文法が分からなかったとして、この文の単語を調べると以下の様になると思います↓
Computational models(計算モデル) have been(?) proposed(提案された) in(の中で) several(いくつかの) fields(領域で), to(〜の方へ)interpret(通訳、解釈する) not(ない、違う) only(〜だけ) the CNS(中枢神経系) functioning(機能), but(しかし) also(〜もまた) its(それの) efferent(遠心性、出力性) behaviour(行動).
こんな感じになりますよね。
強引につなげてみるとこんな感じになると思います↓
計算モデル、提案された、の中で、いくつかの領域で、の方へ、解釈するだけじゃない、中枢神経系機能、しかし〜もまた、それの、出力性、行動
英語だと言いたい事を後から付け加える様な文体のため、
"何を?どこで?"を付け加えながら読むと意味がわかります。
計算モデル(は)提案された(どこで?)、いくつかの領域の中で、の方へ、解釈するだけじゃない(何を?)、中枢神経系機能(を)、しかし〜もまた、それの出力性行動(も)
こんな風にみてみると、変な日本語ですが、何となく意味だけは捉えられるのではないでしょうか?
英論文を読むだけであれば、単語の意味を書き込む作業もしなくても良いと思います。すぐに意味を忘れてしまうからといって意味をちくいち書き込むと、返って面倒になってしまいます。
それじゃ意味は忘れても良いのですか?なんて声が聞こえてきそうですが、忘れてしまって良いのです。
こんな事をしながらその単語と繰り返し出会う事で自然と忘れられなくなります。
もう1つ重要なことは、始め読み始める時は同じキーワードで、いくつも同じ領域の論文を読むことです。
例えばキーワードがバランス(Balance)であったら、その様な論文を10本読んだ方が早く単語が身につきます。なぜならキーワードが同じであれば、論文の中に載ってくる単語も似た様な物が多いからです。
この様にして、少しずつ領域を広げていく様にしましょう。
調べる単語が減るにつれて読む速度が早くなり、より英論文への抵抗も減ります。もちろん私は文法が必要無いと言っているわけではありません。何故なら文字の羅列だけでは、正確な英語の意味を取る事が出来ないためです。しかし、いきなり文法書をマスターしてから論文を読もうと思っても、論文を読み始める作業に入れずに、終わってしまう可能性を危惧しています。
まず単語だけでもササッと調べてしまい、文法の勉強などは平行して少しずつマスターすれば良いと思ってます。機会を作り、必要に迫られた方が文法の勉強も返って捗るでしょう。
まず単語だけでもササッと調べてしまい、文法の勉強などは平行して少しずつマスターすれば良いと思ってます。機会を作り、必要に迫られた方が文法の勉強も返って捗るでしょう。
2016年9月28日水曜日
脳卒中患者の神経可塑性において、コンピューターを用いた計算モデルや、運動学習の変遷は役に立っているのか?
英語タイトル: Computational models and motor learning paradigms: Could they provide insights for neuroplasticity after stroke? An overview
雑誌名: Journal of the Neurological Sciences 369 (2016) 141–148
著者: Pawel Kiper et al(イタリア)
PMID : 27653881
キーワード:
・Motor learning 運動学習
・Computational models 計算モデル
・Stroke 脳卒中
・Neuroplasticity 神経可塑性
・Neurorehabilitation 神経リハビリ
《以下簡単に要約をまとめました》
計算モデルはいくつかの領域で中枢神経系の機能(CNS functioning)や出力された行動(efferent behavior)を解釈する為に提示されてきた。
計算モデル理論は、神経筋/脳機能に関する洞察を与えてくれる為、私達が神経可塑性を深く理解する事が可能となる。
神経可塑性とは、外界の環境と相互作用する事で、中枢神経系の構造的/機能的変化を永続的に引き起こすプロセスの事を指しています。
この複雑なプロセスを理解する為に、運動学習や計算モデルに関連するいくつかの理論的枠組み(paradigm)がこれまで提案されてきた。
このparadigmは、いくつかの内部モデル概念や、神経心理学、神経イメージ研究などにより説明されてきています。
彼らはこの論文の中で、中枢神経系と神経筋機能を説明する、"計算モデル"や"運動学習における理論的枠組みの変遷"などについてまとめている。
また、"計算モデル"や"運動学習における理論的枠組みの変遷"が回復プロセスに関連する役割などについて再度見直ししている。
《以下簡単に本文の説明》
具体的に図を用いて説明しているのは以下のモデルや概念です。
①フォーワード内部モデルの図
運動を実行するときには、身体位置の調整を予測する必要があります。
運動指令(command)が出力コピー(efferent copy )に指令を送りつつ、感覚運動システムにも指令を送る事で、予測した身体位置と実際の身体位置との誤差(ここではノイズとされています)をフィードバックとして検知しているというモデルです。
また、この誤差により運動遂行が改善されていくというものです。
ファンクショナルMRIなどでは、上肢活動時(指で把持する力と物品の重さを比べたもの)において、小脳がこのモデルに寄与している事がしめされている。
文献↓
著者: T. Tamada et al
Activation of the cerebellum in grip force and load force coordination: an fMRI study
②逆モデル(inverse internal model)
もう1つのモデルは逆モデルと言われ、
環境に合わせて、予測された実行したい活動を適切に出力するというものです。
しかし、これらの理論をリハビリの中で用いるには、患者自身が自分の状態(State)に気づけているかが重要なため、次のモデルも使われている。
③感覚運動ループ
運動指令の生成(上)
状態の伝達(右)
感覚フィードバック生成(左)
これらのステージの内部表象(真ん中)
文献↓
著者: D.M. Wolpert, Z. Ghahramani
Computational principles of movement neuroscience, Nat. Neurosci.(2000)
著者の方は、脳卒中患者では内部モデルが障害されているため、運動障害が重度な場合、新たな内部モデル構築は大変であると言及しています。
そのため、リハビリでは運動機能を改善し、全般的な適応能力があるかどうか可能性を探る必要があるとしています。
また、運動学習によって中枢神経系の機能と構造変化を引き起こしていかなければならないとまとめています。
このレビュー文献はどうでしたか?運動学習モデルの代表的なものの紹介論文でしたね。
結論から言うと、役に立つけれどもまだまだ検討が必要な領域の話ですよね。
臨床的には、今患者さんに、どんな事を学習してもらおうとしているのか、中枢神経系にどんな影響を与えようとしているのか?を少し考えるきっかけを与えてくれる文献だと思います。興味があれば是非詳細を原文で見てみて下さいね。
2016年9月26日月曜日
脳卒中患者の非麻痺惻/麻痺側下肢における膝の荷重パターンについて
英語タイトル: Knee loading patterns of the non-paretic and paretic legs during post-stroke gait
雑誌名: Gait & Posture 49 (2016) 297–302
PMID: 27475619
著者: Stephanie Marroccoa et al.(カナダ)
キーワード:
Stroke : 脳卒中
Gait : 歩行
Knee moment : 膝モーメント
Knee loading : 膝荷重
彼らは脳卒中患者の膝に掛かる負担について動作解析装置を用いて調べています。
非対称な歩行の中で、膝に外側/屈曲方向へとストレスが加わり続ける事が、二次的に関節変形や疼痛を生み出す危険性を秘めています。
著者の疑問は
・動作解析の中で外的膝内転/屈曲モーメントを測定し、膝内転荷重量と屈曲荷重量を捉えられるか?
・脳卒中患者の膝荷重を捉え、典型的な荷重減少させる代償を捉えられるか?
であり、9名の脳卒中患者と17名の健常人の歩行を、三次元動作解析を用いて体幹の傾斜も含めて分析した。
膝に加わる負担と、荷重を減らす代償動作との相関もスピアマンの相関係数で調査された。
結果、足部角度や体幹傾斜角度、下肢のモーメントはどちらも有意差はなく、荷重度合いに違いがあったそうです。
著者らは股関節外転筋の筋力低下などがこれに関連している可能性があり、脳卒中患者の過度な荷重が問題ではないかとしています。
《私見》
見た目のアライメントではなく、実際の荷重を捉えることの重要性が示されているように思います。臨床場面ではよく経験する事と思います。
2016年9月25日日曜日
冠動脈不全患者の漸増的レジスタンストレーニング運動負荷量を心拍数で決めるのは妥当か?
題: Is heart rate variability a feasible method to determine anaerobic threshold in progressive resistance exercise in coronary artery disease?
著者: Milena P . R. Sperling et al(ブラジル)
雑誌名 : Braz J Phys Ther. 2016
PMID : 27556384
キーワード
autonomic nervous system; 自律神経系
anaerobic threshold; 運動閾値
blood lactate; 血中乳酸
cardiac rehabilitation; 心臓リハ
cardiac disease; 心不全
1‑RM test; 一回最大挙上重量
今日は心リハ領域の文献を紹介します。
最近では、漸増的レジスタンストレーニング中の代謝性/自律神経反応の度合いが、無酸素的作業閾値(anaerobic threshold : AT)に関連すると言われていて、ATが重要な指標と考えられています。
彼らは、60代前後の冠動脈不全患者20名において、それが妥当なのかを調査しています。
ちなみに左室駆出率60±10%程度と、軽度の症例です(通常の駆出率は50-60%以上)。
運動は最大出力の10%から開始され、漸増的に増加します。
彼らの結果によると、30%の強度で血中乳酸と心拍数増加が同時に見られたそうです。
彼らは心拍数を見ておく事が、非侵襲的な強度測定方法としてとても有効であると結論付けています。
《私見》
臨床的にも心拍数をこまめにチェックしておく事が大事ですよね。この文献は、心不全患者でその事をシンプルに提示しています。
2016年9月23日金曜日
パーキンソン病患者の運動症状の違いは、ワーキングメモリーに関係するか?
テーマ: Motor Subtype as a Predictor of Future Working Memory Performance in Idiopathic Parkinson's Disease
雑誌名: PLoS One. 2016.
PMID : 27015637
今日はオーストラリアのAndrew R. Johnsonさん達の文献を紹介します。
彼らはパーキンソン病患者の運動症状の違い(振戦優位タイプか、姿勢不安定/歩行障害タイプ)によって、ワーキングメモリーの能力に差が出るか、2年間にわたって調査しました。
患者数は114名のパーキンソン病と診断を受けたヤール2-3くらいの症例で、オン時のUPDRS、MMSE、CANTAB SWM(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery Spatial Working Memory Task)、LED(平均Levodopa 投薬量)などを比較しています。
開始時では両群のワーキングメモリーに差はなかったようですが、2年後では、姿勢不安定/歩行障害タイプのみワーキングメモリーの低下を予測させるような変化が生じたそうです。
また、振戦自体の変化はワーキングメモリーと関連しなかったそうです。
そこで彼らは、姿勢不安定性や歩行障害を呈している症例は、2年後にはワーキングメモリーの低下が起こる事を臨床的に予測できるのではないかと結論づけております。
《私見》
それぞれの関連が鶏と卵の関係のようになっているかは定かではありません。ワーキングメモリー低下(前頭葉機能の低下)によりバランスが悪くなってしまうのか?はまだ他に文献を探る必要がありそうです。
何れにしても、パーキンソン病のバランスが悪くなるメカニズム自体の解明がもっと必要そうですね。
2016年9月22日木曜日
脳性麻痺児の歩行では、腓腹筋の筋−腱相互作用はどの様に変化しているのだろうか?
タイトル: Gastrocnemius muscle–tendon interaction during walking in typically-developing adults and children, and in children with spastic cerebral palsy
雑誌: J Biomech. 2016.
PMID: 27545082
Keywords:
Muscle-tendon interaction: 筋-腱相互作用
Cerebral palsy: 脳性麻痺
Ultrasound: 超音波
今日はイギリス・キングスカレッジのGursharan Kalsiさん達の文献を紹介します。
彼女らは脳性麻痺児の下腿三頭筋における筋腹と腱の相互作用が、ダイナミックな場面でどの様になっているかについて興味があって、詳しく調査されています。
一般的に、一側下肢支持相では下腿三頭筋筋腹がアイソメトリック(等尺性)に活動する事で腱は伸長され、プレスウィング相では腱が反動(Recoil)し、筋腹が求心性収縮する事で筋-腱単位(MTU: Muscle- tendon unit)が素早く短くなると報告されています。
彼女達は、脳性麻痺児では筋腹が健常児よりも一般的に細い為、立脚時のアイソメトリック保持が難しくなるのではないか?(求心性収縮よりも遠心性収縮の方が力が必要な為)と仮説を立て、健常成人6名、健常児8名、痙直型脳性麻痺児8名を対象に、歩行時の三次元動作解析と二次元のリアルタイム超音波にて腓腹筋の長さなどを調べました。
こんな感じで・・。
結果、痙直型脳性麻痺児では単脚支持期で下腿三頭筋が等尺性に保てず、伸長してしまったそうです。しかも、この現象はつま先立ち歩行時も同様の結果となったそうです。
≪私見≫
超音波で筋断面を描写しながら、動作解析でアライメントも可視化する手法はとても勉強になります。臨床的に痙直型CP児が膝屈曲姿勢で歩行してしまう現象をよく見かけますが、立脚中期で下腿三頭筋のトルクが不足しているため足関節が背屈し、脛骨を後方に押し戻して保持する活動が不足している可能性がありますね。
しかし今回得られた結果とは反対に、下腿三頭筋の活動がとても強く、Back kneeでの歩行パターンになっている症例も存在する為、やはり症例によってどのような運動パターンになっているかの分析は必要であると思われます。
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