2016年9月12日月曜日

テーマ: 病変側と対側の皮質構造再編成が、皮質下脳卒中患者の運動回復に寄与する: 長期のボクセル単位形態計測(連続平面像から三次元マップを作成する手法)を用いた研究

Contralesional Cortical Structural Reorganization Contributes to Motor Recovery after Sub-Cortical Stroke: A Longitudinal Voxel-Based Morphometry Study

PMID: 27536229



今日は中国のJianxin Caiさん達が発表した研究を紹介します。

彼らは皮質下脳卒中患者における、灰白質量の構造変化をボクセル単位形態計測を用いて調査しました。



《以下要約》
・対象は右利きで初発の皮質下虚血(基底核)を患った急性期/慢性期患者であり、画像とNIHSS、Motricity Indexを評価した。
・灰白質量は急性期/慢性期ともに評価、対応のあるt検定で比較された。さらに、スピアマンの順位相関係数を用いて灰白質量の変化と、臨床的バッテリーの度合い回復の相関を分析した。

急性期の段階と比較すると、慢性期では、病変側の中心前回、中心傍回、対側小脳葉VIIなどの領域において灰白質の減少が見られた。

加えて、対側の眼窩前頭皮質と中間/下位前頭回において灰白質量の増加が見られた。

また、病変側の中心前回における重度な灰白質萎縮が臨床スコアと関連し、対側眼窩前頭皮質と中間前頭回の灰白質量増加が良好な臨床スコアの予測になる事が分かった。

全体の結果を合わせて、病変側と対側の"認知的"皮質領域の構造変化が、皮質下脳卒中の運動回復に寄与している可能性がある。

《私見》
この研究には、脳の構造変化が生じるまでの治療過程が含まれていないため、どのような治療介入が皮質の構造変化をもたらしたのかが不明確な部分となっている。しかし、機能回復が良好な症例は、病変と対側の皮質領域の補助が大きく関わっている事を明確に示している。
現状の所、基底核周囲病変を患った症例の麻痺側肢が回復する背景には、非病変側の皮質領域の多大なる寄与があるという事を念頭に置く必要があるだろう。

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