2016年9月28日水曜日

脳卒中患者の神経可塑性において、コンピューターを用いた計算モデルや、運動学習の変遷は役に立っているのか?





英語タイトル: Computational models and motor learning paradigms: Could they provide insights for neuroplasticity after stroke? An overview

雑誌名: Journal of the Neurological Sciences 369 (2016) 141–148
著者: Pawel Kiper et al(イタリア)
PMID : 27653881




キーワード:
・Motor learning 運動学習
・Computational models  計算モデル
・Stroke 脳卒中
・Neuroplasticity 神経可塑性
・Neurorehabilitation 神経リハビリ




《以下簡単に要約をまとめました》

計算モデルはいくつかの領域で中枢神経系の機能(CNS functioning)や出力された行動(efferent behavior)を解釈する為に提示されてきた。

計算モデル理論は、神経筋/脳機能に関する洞察を与えてくれる為、私達が神経可塑性を深く理解する事が可能となる。

神経可塑性とは、外界の環境と相互作用する事で、中枢神経系の構造的/機能的変化を永続的に引き起こすプロセスの事を指しています。

この複雑なプロセスを理解する為に、運動学習や計算モデルに関連するいくつかの理論的枠組み(paradigm)がこれまで提案されてきた。

このparadigmは、いくつかの内部モデル概念や、神経心理学、神経イメージ研究などにより説明されてきています。

彼らはこの論文の中で、中枢神経系と神経筋機能を説明する、"計算モデル"や"運動学習における理論的枠組みの変遷"などについてまとめている。
また、"計算モデル"や"運動学習における理論的枠組みの変遷"が回復プロセスに関連する役割などについて再度見直ししている。




《以下簡単に本文の説明》
具体的に図を用いて説明しているのは以下のモデルや概念です。




①フォーワード内部モデルの図

運動を実行するときには、身体位置の調整を予測する必要があります。
運動指令(command)が出力コピー(efferent copy )に指令を送りつつ、感覚運動システムにも指令を送る事で、予測した身体位置と実際の身体位置との誤差(ここではノイズとされています)をフィードバックとして検知しているというモデルです。
また、この誤差により運動遂行が改善されていくというものです。
ファンクショナルMRIなどでは、上肢活動時(指で把持する力と物品の重さを比べたもの)において、小脳がこのモデルに寄与している事がしめされている。



文献↓
著者: T. Tamada et al
Activation of the cerebellum in grip force and load force coordination: an fMRI study




②逆モデル(inverse internal model)

もう1つのモデルは逆モデルと言われ、
環境に合わせて、予測された実行したい活動を適切に出力するというものです。

しかし、これらの理論をリハビリの中で用いるには、患者自身が自分の状態(State)に気づけているかが重要なため、次のモデルも使われている。



③感覚運動ループ

運動指令の生成(上)
状態の伝達(右)
感覚フィードバック生成(左)
これらのステージの内部表象(真ん中)



文献↓
著者: D.M. Wolpert, Z. Ghahramani
Computational principles of movement neuroscience, Nat. Neurosci.(2000)



著者の方は、脳卒中患者では内部モデルが障害されているため、運動障害が重度な場合、新たな内部モデル構築は大変であると言及しています。

そのため、リハビリでは運動機能を改善し、全般的な適応能力があるかどうか可能性を探る必要があるとしています。

また、運動学習によって中枢神経系の機能と構造変化を引き起こしていかなければならないとまとめています。



このレビュー文献はどうでしたか?運動学習モデルの代表的なものの紹介論文でしたね。

結論から言うと、役に立つけれどもまだまだ検討が必要な領域の話ですよね。
臨床的には、今患者さんに、どんな事を学習してもらおうとしているのか、中枢神経系にどんな影響を与えようとしているのか?を少し考えるきっかけを与えてくれる文献だと思います。興味があれば是非詳細を原文で見てみて下さいね。

0 件のコメント:

コメントを投稿