2016年9月11日日曜日
テーマ: 多発性硬化症患者に対する上肢のリハビリテーションが白質の微小構造を変化させる
Upper limb motor rehabilitation impacts white matter microstructure in multiple sclerosis
NeuroImage 90 (2014) 107–116
PMID: 24370819
今日は、イタリアのLaura Bonzanoさん達が書いた論文を紹介します。テーマは多発性硬化症患者なので馴染みのない方も多いかもしれませんが、上位運動ニューロン障害であるため、脳卒中症例にとっても参考になる部分があるかと思います。
彼女達は、多発性硬化症患者の上肢麻痺に対する2ヶ月間の課題指向性運動を行うリハビリが、白質にどんな変化をもたらすのかについて調査しました。
《以下要約》
症例は上肢に中等度から軽度の感覚運動障害をもつ病状が安定している30名(女性18、男性12名、年齢43.3 ± 8.7歳)の多発性硬化症患者であり、15名ずつに分けられた。
どちらの群も週に3回1時間の治療プランで行われ、治療群では随意運動中心の活動的練習、コントロール群では他動的なモビライゼーションを受けた。
上肢の運動パフォーマンスはAction Research Arm Test (ARAT)で測定し、巧緻性はNine Hole Peg Test (9-HPT) 、握力についてはダイナモメーターを用いて前後で評価した。手指の運動パフォーマンスについてはセンサーグローブで評価された。
また、拡散テンソル画像(DTI: diffusion tensor imaging)を用いて、脳梁、皮質脊髄線維、上縦束の状態を評価した。
どちらの群も片側上肢の運動パフォーマンスは向上したが、両手動作は活動的練習群の方が良かった(悪化が見られなかった)。また、活動的練習群のほうか皮質脊髄線維や脳梁の白質線維量が保たれていた。
一方で、長縦束の放射状拡散率(radial diffusivity: RD)の増加については、どちらも見られ、これについて著者らは脱髄化に対して効果が薄かったとしている。
最後に課題指向性トレーニングが患者ここに合わせた治療として重要だと締めている。
《私見》
補足ですが、この多発性硬化症患者の研究では、他の研究のように、"何かが良くなった"という表現ではなく、"脱髄していく線維が食い止められた"という表現がされています。多発性硬化症患者では皮質の障害ではないため、課題指向トレーニングのような随意運動の負荷量をグッと上げるのが良いのかもしれないと思わせてくれる文献ですね。
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